†重†

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  ―――聖域、聖本殿。 クロアの帰りを 聖本殿で待ち、出迎えたいと 聖主に願ったロアは、 聖本殿から出ない事と、 今日限りと言う条件で 許可を貰う事が出来ていた。 「お疲れではありませんか?」 夕刻から 夜の帳へと替わった時間。 聖殿の外へと続く 大扉の近くの壁際に 大きめの椅子を用意し、 クロアを待っているロア。 既に 本来の帰宅時刻を大幅に過ぎ、 長時間待ち続けている事を 気にしながら フィリルが訊ねると、 「大丈夫だ、疲れていない。フィリルこそ、付き合わせて悪かった。」 ロアは自分の隣には座らず 傍らに立っている フィリルを見上げ、 淡く微笑み、 問い掛けに応えながら 謝罪の言葉を告げる。 「いえ…お気持ちは判りますから。」 記憶を喪ったロアにとっては 聖殿、聖域から クロアが出て行く事が 初めてとなる状況。 離れている不安と共に、 時間が経つにつれ 無事に帰って来れるのかと 心配してしまう心細さ。 フィリルだけではなく、 聖主も そんなロアの気持ちを 知っていたからこそ、 聖本殿でのクロアの出迎えを 許可していた。  
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