†重†

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  流石にロアも 心配の表情になり、 「セ…セキル?」 気遣う声を掛けると、 「………なるべく、早めに部屋にお戻り下さい。」 「え?…ぁ、まっ…。」 セキルは酷く素っ気ない口調で 注意を残し、 ロアから呆気ない程に すんなりと離れ、 聖本殿を出ていってしまった。 セキルの異変の原因が解らず、 引き止める事も出来ず、 困惑するロアと、 「………………………」 『セキル様…気付かれた…?』 セキルの触れたロアの左頬。 その少し奥にある左耳。 そこにある 婚約する事を認められた証の イヤカフ。 フィリルですら、 直接、触れずとも 気付いたそれに、 ほぼ、確実に気付いたであろう セキルの反応。 フィリルだけが解った 異変の原因。 それらを含む、 これまでのロアに対する セキルの言動を考え、 『俺も、いつまでも気付かない振りは…出来ないかなぁ…。』 最悪を予測しなくても 回避できるならば、 ロアとクロア、セキルの為にも 気付きたくはない結末。 それを脳裏に過らせ、 フィリルは心の中で 密やかに溜め息を吐いた。  
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