†重†

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  幾つもの書類が散る中で、 落とした視線に留まる ディフェルに渡された 婚約者候補の書類。 それを眼にした途端に 喘ぐように苦し気に息を呑み 「兄……上…。」 上がる―震えた声。 「早く………。」 絞り出すような呟き。 「早く……私を…………解放して下さい…。」 乞い願い縋る言葉。 『私から聖主の宿命を消せるのは…兄上だけなのですよ…。』 小さく肩を震わせる セキルの悲痛な懇願。 溢れ出しそうになる 忌まわしい狂愛を抑え込み 縋る心は 誰にも聞かれる事なく 月の光の中に融けた。  
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