†重†

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  予想以上に仕事が立て込み、 聖殿への帰宅が 遅くなってしまったクロア。 急ぎ、聖本殿へと辿り着き、 中へ入ると、 「ロ……ア…?」 聖本殿の壁際で 大きめの椅子にフィリルと座り、 そのフィリルの肩に凭れて 眠るロアの出迎えを受けた。 「あー、お帰り。」 「どうしたんですか!?こんな所で…。」 片手にセキル同様、 幾つかの書類を持ち、 驚きを隠せないまま、 クロアはロアとフィリルの元へ 足早に近付く。 「ロア様がお前の帰りを此所で待って出迎えたいって、聖主様にお願いされてさ…。」 「ロア様が…?」 まさか、 ロアが自分を出迎える為に 聖本殿で待っているなどとは、 考えられなかったクロアは フィリルの説明に更に驚き、 帰宅を待ち疲れ、 眠ってしまったロアの姿を 改めて見詰め直す。 「書類持つよ。」 「あぁ、はい、お願いします…。」 小声で交わされている会話。 クロアは手にしていた書類を フィリルに渡し、 ロアを部屋に運ぶために 起こさぬよう慎重に抱き寄せ、 抱き上げようとする。 その際、 一瞬だけクロアの動きが止まり、 微かに瞠目し、 ロアの寝顔を見詰め、 浮かぶ、 深い愛おしみに満ちた微笑み。  
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