†重†

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  だったが…。 聖主は目の前の肖像画を 鋭く見据える。 たった一枚だけ、 布が掛けられ、 描かれている者が判らない肖像。 その布を乱雑に掴み、 乱暴に剥ぎ取ると露になる、 聖銀の髪に、 紫水晶の瞳の 冷麗とした美貌の相手。 創世の神が創りし最初の子。 “創世の神の半身” “悠久の魂の持ち主” 初代聖主リデアの兄であり、 創世の時代、 聖界を裏切り魔界を創世し、 闇に堕ちた“裏切りの徒。” 今では その髪も瞳も 闇より深い漆黒に染め、 魔界を治める主である“魔王” 魔界に生きるただ一人の “名も無き神族” その姿を 手燭の灯りに照らされた 仄暗い空間で 聖主は無言のまま、 鋭く睨み付けていた。  
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