†失†

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  純白に水蜜桃の薄紅が 重なり溶けたような壁紙。 白を基調に金を指し色に入れ 繊細な細工彫りを施した 揃いの家具。 柔らかく毛足の深い絨毯に、 広い室内を飾る薄紅の薔薇。 優しく、愛らしく、繊細で 可憐な内装の室内。 思わず、 息を呑む、ロアの中の 遠い記憶の何処かが覚えている 酷く懐かしい空間。 その光景と懐かしさに惹かれ、 室内へ数歩、脚を踏み入れ、 窓辺に置かれた椅子が 眼についた瞬間、 ―“ははうえッ!!”― 『え…?』 小さな銀月の幻影が ロアの隣を駆け抜けた。  
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