†失†

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  風に揺れ、広がる 長く美しい白金の髪。 可憐な紅水晶の瞳に 小さな唇。 柔らかな印象の雪白の肌。 小柄で華奢な身体。 緑鮮やかな日だまりの中で 密やかに一輪だけ咲き誇る 薄紅の薔薇のような 楚楚とした愛くるしい面差の ロアによく似た女性。 いつも窓辺に座り、 静かに外を眺めていた母。 「ははうえ!!おはなをもってきました!」 幼いロアが息を切らせて 駆け寄り、 手にしていた薄紅の薔薇を 差し出すと、 「あら!ありがとう。」 華のような笑顔を綻ばせ、 薔薇を受け取り 喜んでくれていた。 「凄く綺麗…。」 母は手にした薔薇を見詰め 感嘆の溜め息を吐くと、 傍らに立つ幼いロアに あどけない笑顔を向けて 優しく頭を撫でる。 そして、 「貴方はだぁれ?」 無邪気に、 無垢に 訊ねる一言。  
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