†失†

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  「ごめんね…。」 何度も、 「本当に…ごめんね…。」 何度も、 「ごめんなさい…。」 泣いて謝り続ける母の姿。 「“ロア”…貴方の名前…私がつけたの…に…。」 命の灯火が消えかける前の、 「覚えてなくて……思い出せなくて…お母さんになれなくてごめんなさい…。」 懺悔の言葉。 「許さなくて…良いから…。」 声が出せなくて、 首を横に振るだけで精一杯の ロアに触れる、 冷たい掌。 「弟を護ってくれる?」 自分を許す代わりに願う、 「セキルのお兄ちゃんになってくれる?」 最初で最後の母子の約束。 「ありがとう。」 泣かないようにするだけしか 出来なくて、 声を出せば 全て嗚咽にしかならなくて、 頷くしか出来ない自分に 最後に母親の笑顔をくれた。 自分の事を覚えて、 思い出して欲しくて…、 自分の事を覚えなくても、 思い出してくれなくても、 分からないままで良いから…、 生きていて欲しかった“母”  
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