†失†

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  ロアの寝室の斜向いにある クロアの部屋。 ロアの居室と同じ内装の 広い室内に、 入口から左斜め奥の 窓辺に寄せられた寝台、 寝台の左手近くに置かれた机、 机の隣に据えられた書棚、 寝台の足元になる向かい壁に 設えられているクローゼット、 部屋の中央の応接室セットと 一揃いの家具が 揃えられている空間。 そこの寝台の上に、 ロアを背後から抱き締める クロアと 身体にまわされたクロアの腕に 自分の腕を絡め、 縋るようにしがみ付き 大人しく座るロアの姿があった。 目覚めた直後に 思い出した記憶の内容の衝撃で 一時、錯乱状態に陥り、 自分の寝室には居たくないと 激しく拒絶したロア。 クロアの部屋に運ばれ、 寝台の上で 抱き締められ続ける事で 漸く落ち着いた今の状況。 「ロア、恐くないか?」 クロアの腕の中に居ても 暫くの間は震え続けていた ロアの身体。 その震えが消えた事で クロアが優しく問い掛けると ロアは深く俯き無言のまま 頷く仕草で答えを返す。 会話を必要としていない、 恋人同士の時間。 静かに流れる静寂の空間。 クロアと触れ合う事で 体温の温もりを感じ、 クロアに抱き締められる事で 胸の鼓動を知り、 生きている確認をしている様な ロアの様子。  
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