†失†

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  ―――神殿、聖司官執務室。 ロアから笑顔が失われた後も、 変わらず神殿へと 登庁してきたクロアに レティスは、 「次期は、お前の部屋で過ごす事が多くなっていると聞いたが…?」 笑顔を失った辺りの日から、 自分の部屋には帰らず、 クロアの部屋に 留まり続けて居るらしい ロアの事をクロアに訊ねていた。 「お気持ちが不安定なご様子ですので、その様に聖主様のご許可も頂き、同室させて頂いております。」 静かに落ち着いた口調で 要点のみを告げるクロアの応え。 レティスが訊いている事が、 笑顔を失った事を含む、 自室に帰らなくなったロアの 状況と原因だと 分かっていながら、 敢えて、 詳細を口にしないクロア。 「お前は、本当に忠義に篤い性情だな…。」 主であるロアの為ならば、 喩え、 どれ程、互いが共に居ることを 望んでも、 それを許す状況がない限り、 良しとせず、 又、 不要となる発言もしない クロアに感心するレティス。 「まぁ…、それだけ己を律する事が出来るからこそ“次期聖主側近”になる事が出来たんだろうが…。」 今も、 ロアの立場と命がある故に 神殿へ登庁しているクロアを 見詰め呟く言葉。  
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