†失†

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  『何を…。』 これ以上、 何を思い出せば良いのか 分からない混乱。 果てしない思考の迷宮。 尽きない不安と恐怖心。 どれだけ、 そうしてい居たのか、 不意に扉の開く音が聞こえ、 ロアが顔を上げると、 「クロア…。」 「ただいま、ロア。」 神殿から帰ってきたクロアが ロアに優しく微笑み掛け、 「お帰りなさい。」 ロアは泣きそうな 憂いを帯びた眼差しで、 無理矢理に笑顔を造ろうとして 笑えずに深く俯いた。 命を絶った記憶を 思い出した翌日から、 笑えなくなったロア。 クロアは笑顔が造れずに 深く俯いてしまったロアの 頭を優しく撫で、 「父上様との話はどうだった?」 笑えなくなった事を 気にしているロアの 気持ちを切り換えさせる為に、 今日一日、 聖主と会っていた事を訊ねた。 「母上の部屋の薔薇は父上からの贈り物だった。」 母の心が壊れた原因を 知る為だけでなく 父の母に対する想いも知る為に 父と二人だけで一日を 過ごしていたロア。  
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