†失†

25/41
前へ
/519ページ
次へ
  「父上と母上は子供の私から見ても、とても仲睦まじい御二人だったから…安心した。」 「そうか。」 幼い頃の記憶に残る 父と母の姿が 偽りではなかった事に ロアは安心すると、 「……でも、原因は教えて頂けなかった。」 母の心が壊れた原因を 父から教えられなかった事を 安堵と不安と混乱の 入り雑じった声で クロアに伝えた。 クロアには 事前に予測が出来ていただけに 応えが返せず沈黙する二人。 「……記憶を…。」 先に沈黙を破ったのは、 「“原因を理解する為にも、記憶を思い出せ”と…言われた。」 原因を教えられる代わりに 父に告げられた事を 口にするロア。 「だが…ッ…何を思い出せば良いのか…分からない…。」 これ以上の記憶を 思い出したくないと訴える 気持ちを抑え込み 振り絞るような言葉。 「父上の事も、母上の事も、セキルの事も……思い出したッ!!」 ロアの家族、 「此処での事も、兄君達の事も…ッ!!」 聖殿から出される事なく育ち、 片手で数えられるだけの 知り合いしか居ないロアの 過去と身内の記憶の全て。  
/519ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加