†失†

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  セキルの手の感覚に 身体が強張り、 反射的に手を引こうとするロア。 だが、 セキルはロアの…、 クロアの指輪が填められた 右手を離さず、 暫く、ロアの指にある クロアの指輪を 無言で見詰めたまま、 「セキ…。」 「兄上は…。」 ふっと 酷く優しい微笑みを浮かべ、 「兄上は、いつまでクロアの部屋にいらっしゃるおつもりですか?」 ロアがクロアの部屋に 留まり続けている事を 唐突に訊ねてきた。 「それは…。」 「“記憶が戻るまで”ですか?」 「……………………。」 ロアの先手を打って 答えを告げるセキル。 「兄上は、本当に記憶を取り戻すお気持ちがあるんですか?」 「ッ―!!」 答えられなくなったロアへ 問い詰めるロアの本心。 「“神殿筆頭”“聖司官”」 「―――――ッ!!」 今、直面していても 理解できない“記憶の一つ” 何故、急に セキルがそんな事を 問い詰めてくるのか? ロアには何も分からなかったが 「神殿…の、事は…“大兄君”の管理…。」 「兄上の事ですよ。」 「違うッ!!」 聖司官の事を否定しかけ、 突き付けるセキルの言葉に 激しく叫び、拒絶した。  
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