†失†

34/41
前へ
/519ページ
次へ
  「“関係ない”…ですか…。」 ヒヤリ―と ロアの背筋を氷塊が滑り落ちる セキルの声が響いた。 「―ッ………セ…キル…。」 これまで一度も聞いた事のない 冷徹さを感じる響きの声に 先程までの興奮が 一気に冷めるロア。 長期間を一緒に過ごし、 昔の記憶や兄としての想い、 母との約束等を思い出した事で なんとか薄れかけていた セキルに対する恐怖心が ロアの中に再燃する。 「はな…。」 「本当にクロアと兄上の事に、私が関係ないと思っておられますか?」 蒼褪め、震えるロアと 笑顔を消した無表情で 淡々と語るセキル。 「それ…は…。」 クロアとロアの関係に関わる セキルの事。 セキルが、ただの弟としての 記憶しかないロアには、 「お前は…私の……お…“弟”…ッ。」 「私は“嫉妬深い”と、前に言いましたよ。」 「ッ!!」 分からない本当の意味。 それだけではなく、 未だに情愛を示す物事が 分からないままのロアには、 理解する事も出来ない、 セキルの怒り。  
/519ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加