†失†

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  「教えて差し上げます。」 「何をッ!?」 何を教えるつもりなのか 語らずに告げるセキルに ロアが声を放つと、 「ッ…セキルッ!!」 セキルは 強張る体で抵抗を見せるロアを 半ば無理矢理に抱き上げ、 「セキルッ!!降ろせッ!!」 セキルの肩と胸に 両手を突き当て、 必死に腕から降りようと 抗うロアを連れ、 聖央塔へと向かい歩き出した。 ――――― ロアに同行を断られた フィリルはその頃、 『“二人だけに”って…言われてもなぁ…。』 いくら、 ロアの言葉であったとしても 簡単にセキルと二人きりには 出来ず、 万が一を考え、 二人の姿だけが確認できる場に 身を置いていた。 会話は一切、聞こえず、 ロアとセキル、 二人のやり取りを見ている限り 危険を感じる事はなかったが、 暫くすると不穏な雰囲気が満ち 抗うロアを無理矢理に 抱き上げるセキルの様子が 見えたフィリル。 直ぐ様、 二人の元へ駆け出し、 「ロア様ッ!!セキル様ッ!!」 「フィリルッ!!」 「……………………。」 セキルの腕の中で蒼褪め 怯えきっているロアと、 冷たい無表情のセキルの前に フィリルは立ち塞がった。  
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