†失†

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  「どけ…。」 セキルの端的な一言。 「いえ…えぇっと…、ロア様を降ろして頂けませんか?」 フィリルの一見、 のんびりとした否定の言葉。 「お前が私と兄上の事に口を出すのか?」 「ロア様の部下なので…。」 神経に触れる緊張を孕む やり取り。 「“部下”の範囲を逸脱していないか?」 「あーいや…“クロアの代理”なので…。」 声と口調だけは静かで穏やかな セキルとフィリル。 だが、 ロアですら息を呑み、 迂闊に第三の声を挟めない対峙。 互いに一歩も退かない意志が 攻めぎ合い、限界を超えて 破裂しそうな空気が満ちた空間。 そこに、 「何をしている。」 重く厳粛な声が響き、 「父上…。」 「……………………。」 「聖主様…。」 ロアの混乱の叫びを 感じ取った聖主が姿を顕した。  
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