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―――神殿。
公務の休憩時間を使い、
中央から神殿へと
レティスを訪ね赴いていた
ディフェルは、
レティスと二人だけの
聖司官執務室内で
ロアが目を通し、
訂正を入れた書類を前に、
「……仕事だけ…出来て、どうする……あの従弟は…。」
頭を抱えた状態で
諸々の複雑な感情を込めた
溜め息を深々と吐いていた。
「まぁ……これで“聖司官の職務が出来る程度には回復した。”と言う証明にはなっているから……良しとしてはどうだ…?」
聖司官の職務は出来ても、
肝心の“聖司官”である記憶と
自覚、認識が持てなければ
意味はなかったが、
それでも一応の助言を添える
レティス。
「それは…そうだが…。」
不承不承に同意する
ディフェルに
「最悪…状況に依っては聖主様にお願いして、今のままの次期を聖司官の席に戻す事も考えている。」
可能性としての言葉だが
聖司官の職務が
果たされるのであれば、
記憶の戻らない状態のまま
ロアを聖司官へと就かせる事を
本気で検討している
レティスの言葉。
最悪、
もしも、
万が一、
このまま、
これ以上、
ロアの記憶が戻らなければ…。
有り得ない訳ではない可能性に
沈黙してしまう二人。
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