†悲†

3/40
前へ
/519ページ
次へ
  「ッ!!ぁ…」 背中を床に打ち付ける衝動で 思わず眼を開けてしまうロア。 その視界に映るセキルの姿と、 乳白色の光に満ちた世界。 瞬間 意識の中に流れ込む、 「此所が兄上を…」 セキルの声と、 ―『セフィロトの苗木のお前を…』― 遠い記憶の中の父の声。 眼前に拡がる、 ―『ちちうえ……いたい…』― 泣いている幼い自分と父の、 ―『後、少しだけ頑張りなさい』― 優しい声と頭を撫でる大きな掌。 初めて 【セフィロトの苗木】の力が 目覚めた、五つの年。 気付いた時には この生命の間で、 力を封印している途中だった。 まだ、幼い体には 強すぎる影響を与える力。 それを肉体を器にして 力を納める封印の負担で 全身に生じる痛みと発熱と 目眩と息苦しさ。  
/519ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加