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―『いたい…ちちうえ……すごく…いたい…』―
息が苦しくて、身体中が痛くて
封印の陣の中心に据えらた
寝台の中で泣き続けた。
―『もう少しの我慢だ』―
泣き続ける自分の頭を
撫でてくれる大きな父の掌。
―『後、少しだけ…、頑張りなさい』―
痛みに耐えられず、
泣き縋る自分を
抱き締めてくれる
大きな腕と広い胸。
―『封印が終れば、お前は…』―
父の温もりに重なる、
―[自由になれる故…]―
聖銀の髪の主の透明な声の囁き。
―[自由…?]―
生命の間に封印され続けていた
“リデア”の記憶。
全身を苛む痛みの中での
問い掛けに
―[さよう]―
甘く優しく微笑む兄。
セフィロトの力を
肉体に完全に封印する事で
生命の間を出ることが許された
リデア。
―[これで、ただこの世界の為に使われるだけの存在ではなく、我と共に生きる事の出来る存在]―
力の封印が施されたリデアに
囁く慈しみの言葉。
―[…兄君のお側…]―
頬に触れる兄の掌の冷たさが
心地好く、瞼を閉じたリデアの
智慮と愛惜に満ちた声。
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