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―[私の力は命の力]―
傍らの兄の紫水晶の瞳を見詰め、
自身の存在理由と
その意味を理解している
眼差しで、
―[いつか…この世界の為に再び、使われる時まで…]―
彼の者を想いながら、
己の宿命を受け入れる
リデアの言葉と交錯する、
「“セフィロトの苗木”とは、“生命の樹”と似た性質を持つ力を宿し、あたかも“セフィロト…生命の樹の力”を苗木を移植し、植樹するかのように世界に具現させるモノ」
セキルの淡々とした現実の声。
「兄上、貴方の封印されている力の事であり、兄上御自身の事」
自分自身の存在理由を忘れ去り
拒み続けているロアへ、
「貴方は“セフィロトの苗木”いつか此所に封印され、この世界の為に使われる道具」
「…ちが……」
意識に刷り込むように
流し込まれる現実に
テイコウ
弱々しい、掠れた抗いの呟き。
セキルに
両手を床に押し付けられ、
組伏せられたまま、
「父上…“聖主”の後を継げる者が、此所で貴方を所有できるんです」
突き付ける現実に、
―『お前がセフィロトの苗木だからだ』―
聖主の冷徹な声。
命を絶つ事さえ
赦されなかった記憶の真実。
そこに、
「兄上…愛しています…」
耳許で伝えられる
セキル -ココロ-
認められない大罪の毒。
一挙に押し寄せる記憶と、
絶望の濁流に
「―――――――――!!」
ロアの声にならない
絶叫が上がった。
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