†悲†

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  「巫山戯けてあのような事が出来る訳がないでしょうッ!!」 自分の胸倉を掴む ディフェルの腕を掴み叫ぶ セキル。 兄である ロアの心を壊しておきながら、 「全て兄上の為だからですッ!!兄上を救う為に必要な事だからですッ!!」 必死の言葉で告げる 隠された本心。 「どういう事だ!?」 セキルの矛盾を問い糾す ディフェルの鋭い斬り込みに、 「ッ…!!……言えません…」 「セキルッ!!」 ディフェルの挑発と 己の失言に気付き 言葉を詰まらせ、 冷静さを取り戻そうと セキルは声を振り絞る。 「……帰って……下さい…」 「セキルッ!!」 掴んでいたディフェル腕を離し、 「帰って……兄…上を……兄上を…“私から護って下さい”」 たった一つ、伝えられる セキルの願い。 ディフェルに言えない、 告白できない“聖主の――” ディフェルも神殿で レティスと話し行き着いた 聖主の直子に関わる、 セキルとロアが変わった 原因の答え。 「それが、………俺達に出来る事か?」 ディフェル達だけで関わるには 重責すぎる事。 だが、 セキルとロア、 二人の弟達を救えるならば、 関わると決意している ディフェルの覚悟の問いに セキルは無言のまま頷いた。  
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