†悲†

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  クロアの部屋の寝台に ロアはただ、座っていた。 軽く俯き、 視線の先にある 虚空を見ているだけのロア。 「ロア…少し、休もうか?」 クロアが声を掛けても、 無言のままで 一言も話さない壊れた姿。 クロアが寝台の中に横たえ、 掌で瞼を下ろすと ロアは眠っているかのように 瞼を閉じたままに情態になる。 人形のように、 物のように、 何の意志も 自我も思考も何もない姿。 まるで 【セフィロトの苗木】と、 成った時と同じ、 ロアの、 主の、 最愛の姿に、 「―――――ッ!!」 唇を噛み締め、 拳をキツく造り込む。 セキルがまさか、 ここまでロアの心を壊すとは 考えていなかった。 警戒はしていても、 セキルの執着を分かっていても 心の何処かでセキルの良心を クロアは信じていた。 ―『お前ッ!!…お前が兄上を…必ず護れッ!!クロアッ!!』― セキルの成人の儀の日。 ロアとセキル、聖主、ミレアの 話し合いの直後、 話し合いの場と成っていた、 聖務室の外に控えていた クロアに 聖務室を飛び出してきた セキルが言った言葉。  
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