†悲†

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  夜も更けた深夜。 クロアは一人、 一つの扉の前に立っていた。 個人で管理すると云っても 余りに広く、 幾つもの部屋が存在する 居住棟の最奥の部屋。 滅多にどころか          イッカク 全く使われていない一劃に 位置するその部屋の前に、 無言で佇むクロア。 思慮深いの眼差しで 目の前の扉を見詰め、 何かを考え、 迷い続けている様なクロアの姿。 そこに 「クロア……?」 「…ディフェル様?」 不意に掛かる、 ディフェルの声。 セキルの部屋を出た後、 一度、中央に帰り、 1日の務めを終わらせると、 今日の事を踏まえ 再び、聖殿に戻り、 数日留まる事にしたディフェル。 セキルの管理する棟に居る筈の ディフェルの姿に、 「このような時間に何かありましたか?」 流石のクロアも戸惑い、 この場に居る要件を訊ねる。 「久し振りの聖殿で眠れんだけだ」 簡素に、 ディフェルは深夜の放浪を 悪びれる様子もなく告げ、 「お前こそ、何をしている?」 本来なら ロアの傍に付きっきりの筈の クロアに問い掛ける。  
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