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無意に過ぎ去る日々。
ロアが何の反応も
見せなくなってから数日。
―夜刻―
窓辺に寄せられた
クロアの部屋の寝台の上に
軽く俯き座った状態で
「“生きている。”ではなかった」
何の前振りもなく
突如、ロアは言葉を発した。
「ロ……」
「私は“生かされたんだ”」
突然の事に驚くクロアには
構わず、
「あの日…私は確かに死んで…」
何の感情も篭っていない、
空の響きの声で、
「強制的に生かされた」
絶望の始まりの記憶を
語り出したロア。
「弟を護りたくて…」
トツリ―、
「母上との約束も護りたくて…、」
トツリ―、
「父上ならば…分かって下さると信じて…」
トツリ。
「間違っている事も愚かな事も理解していて、本当は恐ろしくて堪らなかった、けど…選んだ過ちの選択だった」
虚無的に、
淡々と語るだけの声。
弟を大罪から護る為に、
自ら命を絶った時と後の記憶。
もう、二度と目覚める事のない
意識が突然、目覚めた瞬間。
そこは命を絶った筈の
自分の寝室で、
見慣れた天蓋の光景があった。
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