†悲†

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  何が起きたのか、 何が起きているのか、 何も分からなかった。 極普通の目覚め。 ただ、躰が異常に重く、 息がしずらいだけだった。 「ロア…」 暫く、 ぼんやりと 天蓋を見詰めていると、 薄い天蓋幕の外から掛かる 父の声。 「……父上…?…ッ…!!」 「まだ、寝ていろ」 外から幕が上げられ、 父が姿を見せた事で 身を起こそうとして、 起き上がれず 父に、 再び、寝台へと横たえられた体。 そこで漸く、 喉と頸の激痛を自覚し、 痛みに耐えていると、 「何があったか覚えているか?」 今の状況に至った 具体的な内容を思い出させる 問い掛けを父が向けた。 “何が” 目覚めたばかりで、 二つの激痛にも 苛まれている思考。 それを懸命に巡らせ、 必死に目覚める前後の記憶を 呼び起こし、 “何が”あったのか 理解した瞬間に あまりの異常さに 言葉を、 声を、 一瞬、忘れた。  
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