†悲†

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  一つの世界を 滅ぼす事も 造り変える事も 新に産み出す事も出来る、 いつか、この世界の為に 必要となる万能の道具。 その為に、 「お前は、この“聖主”がどのような手段であっても生かす」 冷酷に無感情に 死すら望めぬ現実を突き付ける、      †聖主† 父ではなく、 「私は……」 ロアは、 「道具として…」 父の姿をした 「†聖主†に“生かされた”」 聖界の主“聖主”に モノとしての価値で生かされた。 ――――― 「クロア…」 ふっと ロアの視線が動く。 数日振りに ロア自身から見せた行動。 無機質な白月の瞳に、 深藍の夜空を映し、 「私は“モノ”で“道具”で…生きる自由も死ぬ自由も…何もない存在だ」 何の感情もなく、 なのに、 縋る何が宿る声。 泣いているようにも見える 美しい無表情。 その姿から溢れ出る、 悲愴に耐えられず、 クロアはロアの 華奢な体を抱き締めてしまう。 その胸の中で、 「それでも…」 壊れた心から零れ出る、 「お前の恋人にしてくれるか?」         -ロア- -アイ- 切ない程に切実な最愛の祈り。 心が壊れても、 たった一つだけ求める 恋人の姿に、 「“愛してる”」 クロアは、 これまで 直接、伝えられなかった、 愛の言葉で、      ココロ      愛を注いだ。  
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