†悲†

21/40
前へ
/519ページ
次へ
  軽やかく―       晴れやかに― 可憐に―        力強く― 水面を踊り弾く水滴の音楽。 クロアに中庭の噴水まで 抱き上げ連れて来られたロア。 水辺となる噴水の縁へと 座らされ、 溢れ出る水音の演奏に 身を任せる優しい午後。 「噴水の水音が好きだろう」 大人しく無表情のまま、 水辺に座っているだけの ロアの正面に屈み込み、 優しく語り掛けるクロア。 これまで ロアが理解できなかった 愛情を伝える言葉を使い、 何の反応も見せない心に 音と言葉で クロアは刺激を与えようとする。 「中庭の散策の途中、ここで良く二人で休んだ」 ロアからの返事は何もなくても 二人の思い出を絡めて、 語り続けるクロアの言葉。 「お前と二人だけで過ごす、ここでの時間が俺も好きだ」 柔らかく、暖かく、緩やかに 二人だけの一時を 水音の音楽と クロアの愛情の声だけで ロアは過ごす。 ―停滞の時間― ロアからの反応は一切なくても 二人を包み込む真綿のような 優しい温もりだけは生まれる 恋人たちの雰囲気。  
/519ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加