†悲†

23/40
前へ
/519ページ
次へ
  ――すると、 ロアからクロアに 重ねられる唇。 そっと、繊細に 柔らかく優しく、 クロアの方へと身を乗り出し 甘やかに― ロアから交わされる口付け。 泡沫の蜜のように 直ぐに蕩けて終わってしまう 柔かなロアの唇が離れると、 「ロア?」 「私には…何も無いから…」 口付けの意味を告げる、 「私だけしか…お前にやれるモノが無いから…」 ロアの一言。 物である自分には クロアに与えられるモノが 何一つ無いから…。 せめて、 自分自身を捧げようと伝える    -アイ- 切実な応え。 必死に、 壊れた心の片隅で、 クロアの恋人として生きようと 足掻いているロア。 そんな姿に 「お前は俺の恋人だ」 モノではないロアの存在を証し、 「お前に何も無いのなら…」 壊れたロアの心に 「俺がお前を愛して、全てを与えてやる」 クロアは自身の全てで 心と感情を注ぎ続ける。  
/519ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加