†悲†

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  「弟君のイルサ殿は平気なんですが…」 『なーんでライル殿は苦手なのかなぁ…』 更にライルとクロアの弟、 “中央軍部前線部隊、能天” 能天使長補佐イルサの事を 思い出し ライルを苦手とする原因を 考えてしまう。 見た目の印象は兄弟だけあって どこか似ている三人。 「ライル殿はとても真面目で、他の者に対しても厳しい性情だからではないかな?」 思わず考え込んでしまった フィリルに、 ライルの性情を指摘してみる レティス。 だったが、 『それってクロアもだよなぁ…』 どう聞いても、クロアの事を 指摘しているようにしか 聞こえない言葉に、 ついつい、 フィリルは内心で呟いてしまう。 「では、中央に行ってきます」 「頼むよ」 仕事は仕事と 自身の苦手意識を他所に置き、 中央に向かう為に、 聖司官執務室を退室する フィリル。 聖司官執務室内から外に出て 扉を閉めた後、 廻廊から見える 神殿の庭園の小雨の景色を 見詰めて、 「ライル殿も苦手なんだけど…」 『雨も苦手なんだよね…』 声と内心で溢す、 気持ちが沈んでいる 本当の原因。 それは―雨― 何故なら、 『あの時の事…思い出すんだよなぁ…』 数年前の出来事を 思い出してしまうから。  
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