†悲†

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  「あにうえッ!!あめですッ!!」 聖界では珍しい雨天の朝。 楽しそうに、はしゃぐ 弟の声。 「ほんとだッ!!雨だね…」 弟と二人で自室の大窓から 外を見詰めて、 同意する自分。 12歳の自分と5歳の弟。 「そと、でましょうッ!!」 「えッ!?…でも、父上に…」 「あーにーうーえー…はやくッ!!」 「わわッ!?」 小さな弟の小さな手。 幼い強引さと思い付きで 弟に手を引かれて 中庭に連れ出されてしまう自分。 「つめたいですねー」 「冷たいねー」 雨除けとなる物を何も持たず 中庭に出た為に 濡れそぼってしまう二人。 「きもちいいですねー」 「気持ち良いねー」 『父上……怒るかなぁ…』 父に叱られる事を 漠然と考えながら のんびりと交わしてしまう 弟との会話。 「あにうえもせいいきのそとと、おなじですねー」 「へぇ…?」 不意に 予想もしなかった事を告げられ、 戸惑う兄。  
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