†悲†

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  そんな兄に 「せいいきのそともあめにぬれてますッ!!」 誇らしげに笑う 弟の笑顔。 「あにうえもあめにぬれてますッ!!」 無邪気に告げる、 雨降りの中庭に出た理由。 「だから、いまはせいいきのそとですッ!!」 「……………………」 それは、 聖域の外、 聖殿から出られない兄を想う 幼い弟の真心。 雨は聖域の外にも 聖界中にも一斉に降り注ぐから 今だけは 世界と一つと笑う弟。 「うん…聖域の外だね、ありがとう…セキル」 いつも、いつも そうやって 幼い心で自分を労り、 気遣ってくれる 最愛の弟だから…、 母との約束があったから だけではなく、 喩え、 過ちの方法であろうとも…、 命を棄ててでも…、 『護りたかったのに…』    †聖主の――† ―『兄上…愛してます…』―    【大罪の宿命】 護りたいと願う事さえ 許されなかった。  
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