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  「智天使長様から話を聞いた」 「ライル様」 後任への引き継ぎの為、 手続きをしているクロアの元に 現れるクロアの兄。 中央組織軍部、 智天使長補佐ライル。 「堅物な性情のお前の事だ。決断しないのではと心配していたが、良かった」 中々、 決意しようとしなかった弟を 半ば呆れながらも 安心した面持ちで見詰める ライル。 「御心配をお掛けしました」 上官、智天使長と共に 次期聖主側近候補の推薦を 勧めてくれていたライルに 深く礼を取り、 クロアは謝辞を伝える。 「何がお前を決断させたのか、気になるところだが…訊かないでおこう」 兄弟であるからこそ、 クロアの真面目で責任感が強く 堅い性情を知るライルは 弟を信じ、 決断の理由を 敢えて、訊こうとはしなかった。 クロアが長年、勤め続けていた 智天使長近衛官を辞任してでも 次期聖主側近候補となった理由。 それは― 兄でもある 智天使長補佐ライルの使いで 神殿に赴いた、 あの日に見た光景。 暖かな陽射しに照らされた 神殿の庭園。 その樹の一つに凭れ掛かる 一人の少年の姿。  
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