†始†

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  日の光を受け、 銀に仄かな金を宿し 風に揺れる長く美しい髪。 凛と佇む清廉とした姿。 白磁の肌に まだ、あどけない横顔。 可憐な少女のようにも見える 面差しと白月の目許に浮かぶ 深い慈愛に満ちた微笑み。 始めは それが誰なのか クロアには分からなかった。 ただ強く心が惹き付けられた 少年の微笑みと佇まいの雰囲気。 だが、 不意の一瞬だけ、 クロアの方に視線が向けられ、 その瞬間にはっきりと見えた 白月の瞳が、 ―『次期様は珍しい銀月の髪と月色の瞳をされて居られるそうだ』― 以前、兄に聞いた 次期聖主の姿を語った話を 思い起こさせ、 『あれが……』 少年の正体に思い至った時、 『次期…様』 少年を自分の手で、 一番身近な場所で、 護れる事が出来る可能性にも 気付き、 『お側に…』 自分の命に代えてでも、 護れるならば、護りたいと クロアは強く切望した。 その責任と重要性を思えば 簡単な決断ではなかったけれど それから、 次期聖主側近候補として 約一年半の検定期間と 幾つもの試練を乗り越え、 最後には、クロアが選ばれた。  
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