†始†

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  その間も、 あの少年の 深い慈愛の微笑みと 凛とした佇まいの姿を 片時も忘れなかったクロア。 次期聖主の少年の 名前を知ったのは、 次期聖主側近と任命され 側近の証の剣、 “神剣”を与えられた時。 主を護る為の剣。 聖界では 聖主と次期聖主の側近のみが 持つ事を許される特別な武具。 魔族だけではなく、 同族である天族に 神族までも殺める事の出来る剣。 “主の名”と“神剣”の二つを 与えられ、 漸く、次期聖主側近として 成人した少年に クロアが引き合わされた時、 そこは…、 窓も扉も全て封印で閉ざされた 薄暗い室内。 眠る為の寝台以外は何もなく、 寝台に取り付けられている 枷が異質な光彩を放つ、 光景があった。 とても、 次期聖主、 聖界の次代を引き継ぐ者への 待遇とは思えない部屋。 その寝台の上に身を起こし 座っているだけの、 僅か二年で、 息を呑むほどに美しく成長した 笑顔を無くし 凍った白月の眼差しと 冷淡な無表情を浮かべた あの時の少年がいた。  
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