†始†

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  雨が上がった後の 不思議な静寂に包まれた朝。 フィリルがクロアの部屋を 訪ねると、 「はい」 ロアの朝の支度を終えた様子の クロアが直ぐに応じ、 中から扉を開けてきた。 「おはよう。ロア様のご様子はどう?」 「おはようございます。今朝からは少し、御自分で動かれるようになられました」 フィリルに応じながら、 廊下へと出るクロア。 雨の日の昨日、 突然、居なくなった事を含め ロアの心配しているフィリル。 今朝、目覚めると ロアはほんの少しだけだったが、 自分からクロアに話し掛け、 自分で動くようになっていた。 それが雨の日の行動と どの様に関係しているのか、 クロアには原因を 予測するしか出来なかったが、 僅かに情動が戻っていたロア。 「そっか…良かった」 クロアの言葉に 安堵の溜め息を溢すフィリル。 「御心配をお掛けしました」 クロアが深く礼を取り、 失踪の件での労りの言葉を 向けると、 「えッ…いやッ、俺もお前を呼び出したからさ…ほらッ…」 フィリルは慌ててしまい、 「あー、じゃぁ…俺、神殿に行ってくるから」 突如、生じる気不味さから、 その場を離れてしまう。  
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