†始†

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  ロアの私室近くの廊下。 個人的に済ませたい用事を 片付け、 立ち入れなくなっていた自室に 一人で戻る途中、 ロアはそこで自分の様子を 伺いに来たらしい聖主と 鉢合わせた。 「ッ!!」 「……………………」 ロアの中では 聖央塔の一件の時と その後の記憶での姿が 最後の父、聖主。 心のどこかでは、 この場で対面する可能性も考え 覚悟はしていたが、 直ぐには消えない恐怖心から 反射的に息を呑み、 体を強張らせてしまうロア。 一方で聖主は 昨日まで僅かな反応しか見せず、 雨の日の件以外では 殆どの情動がなかったロアが 一人で動き回っている事に 特に驚く様子もなく、 無言でロアを見下ろした。 突発的な対面で生じる沈黙。 それを壊すのは、 「おはようございます」 まだ、心に棲み付く恐怖心を 圧し殺し、 聖主に向け、朝の礼を取るロア。 そうして 真っ直ぐに聖主を見詰めると、 「貴方は…父上と聖主…どちらですか?」 目の前に立つ相手が 自分にとって どの様な存在なのかを ロアは問い掛ける。  
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