†始†

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  クロアの手を離れ、 独り立ちし、 徐々に記憶を喪う前の強さを 取り戻そうとしているロアの 主の姿に…、 「ッ!?…ク……クロア?」 クロアはロアを 抱き締めてしまう。 「えッ…ぇ…と……クロア?」 突然のクロアの抱擁に 驚くロアへ、 「少しだけ…」 「え…………?」 「少しだけ、このままで居たい…ロア」 『お前が記憶を取り戻せば…ただの恋人同士には戻れない…だから…』 甘く切なく 現状の維持を求める クロアの言葉と心。 まだ、クロアが 自分の側近であることを 思い出してはいないロア。 クロアの手を完全に離れ、 “聖司官”を含む、 ロアの在るべき地位と 記憶を取り戻してしまえば、 二度と ただの恋人同士には戻れない ロアとクロアの本来の関係。 恋人関係よりも強い、 主従関係。 一度は棄てる決意もしたが、 クロアも望んでいる筈の 本来の二人の姿。 だが、 『これが…最後だ…』 ただの恋人同士としての クロアの最後の抱擁。 まるで、 クロアの世界だけに ロアを閉じ込めるような、 激しく力強いそれに、 「………うん…」 ロアは小さく頷き、 幸せそうに身を委ねた。  
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