†始†

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  夢を視る。 自身の記憶であって 自分自身ではない者の 記憶をロアは夢に視続ける。 彼の者は一人、長椅子に座り その相手を待っていた。 パラリ―と、 手にしている書を捲る音が響く 静かな室内。 扉が開く気配と音が聞こえ、 顔を向けると、 ―“セラフ…”― 待ち人である兄ではなく、 自分を監視し警護している 弟の姿があった。 黄金の髪に深い蒼水晶の瞳。 精悍な面に いつも、不機嫌そうな 厳しい表情を浮かべている リデアの弟―セラフ― “全てを護る者” “永遠なる守護の魂の主” として、産み出された 創世の神の三番目の子。 “全て” それはこの聖界と呼ばれる 世界を構築する理の全てであり、 つまりは、 創世の神に代わり、 途中から、 この世界の一部を造り出す道具、 【生命の樹】 セフィロトの力を宿す リデアを護り、 その力が悪用されるのを 防ぐ事が定めの弟。 ―“兄君は父の元より、本日は戻りません”― 一番上の兄を待つリデアに 義務的に告げるセラフの説明。 ―“そうか…教えてくれてありがとう”― 自分には、冷たく 無関心とも云えるセラフに 柔らかく微笑み、 感謝を告げるリデア。  
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