†始†

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  ―――神殿、聖司官執務室。 フィリルはレティスに渡された 幾つかの書類を確認しつつ、 「ロア様って…本当にスゴいですよね…」 数日前、 レティスに自ら頼み込み 聖司官の仕事の一部を 受け持ち始めたロアの、 記憶が無いにも拘わらず 的確で正確な書類の内容に つい感嘆し、そんな呟きを 溢してしまっていた。 「元々、自分が聖司官である事が理解できないだけだからね」 聖司官としてのロアの 師でもあったレティスは、 フィリルの感心を半ば認め 残りは当然の事と返答しながら、 何気無く、 数日前のロアとのやり取りを 脳裏に過らせ思い出す。 ――――― 数日前、 意志を取り戻してから、 神殿、聖司官の公務の一部を 任せて欲しいと、 ロアがレティスに 申し出ている事を聞き、 回復した様子の見舞いも兼ねて 聖殿、ロアの元を訪れた レティス。 「大兄君」 「良かった、元気そうだね」 ロアはレティスの突然の訪問に 驚きながら、 レティスを自室に迎え入れ、 すっかり情動が回復している ロアの様子にレティスは 密かな安堵の溜め息を吐き、 穏やかな微笑みを浮かべていた。 心が回復してから、 自分の意志と考えで 聖殿に留まる事を決め、 聖主に居住棟の隔離結界の 解術も自ら願い出ていたロア。  
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