†始†

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  心を壊し、情動を取り戻す前の 逃げる事だけしか 考えられなかった自分を 変える為に、 現状を直視して 立ち向かい始めたロアの姿に レティスは内面の変化を 確かに感じ取る。 まだ、 記憶を喪う前ほどではないが 前向きな強さを 取り戻しつつある今のロア。 「聖司官の公務を行いたいと聴いたが?」 軽い雑談の前置きの後、 レティスが見舞いの他の もう一つの目的を告げると、 「はい、今はまだ、どれだけの事が出来るのか分かりませんが、神殿の公務を手伝わせて下さい」 ロアは真っ直ぐに、 自らの師でもある レティスを見詰め、 自分の意志を示し、願い出た。 「お前が自分の意志でそう言うのなら…公務の一部を任せよう」 以前の様な     カタチ 手伝いの状としてではなく、 正式な任命の状でロアの願いを 認めるレティス。 だが、 「その代わりに……“次期”」 「ッ……はい…」 レティスはこれまで殆ど 口にしないでいたロアの 俗称を口に出し、 「お前が何故、私達にそう呼ばれるのか、その意味を考えなさい」 “次期聖主” ロアが本来、 成るべき者としての地位。 その事を全く思い出せず そう呼ばれる事にもやはり、 怯え、拒絶してしまうロアに もう一歩踏み出す為の 切っ掛けを承認と併せて レティスは与えた。  
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