†始†

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  『今はまだ…無理か…』 逸る気持ちを抑え付け 冷静に自分の情態を考え 無理に進むべきでは無いと 考えていると、 「ロア?」 「ッ!?」 聖務室にロアの仕上げた 神殿の書類を届けに行っていた クロアの呼び声が耳に飛び込み、 驚いた弾みで 手にしていた書籍を ロアは落としてしまう。 「どうした!?」 「ぁ…何でもない、少し驚いただけだ」 書籍が廊下に落下する音と ロアの驚いた様子に クロアが心配して駆け寄り、 書籍を落とした理由を ロアが説明すると、 「そうか、驚かせて悪かった」 「いや、気付かない私も…」 クロアはロアに 急に声を掛けた事を謝り、 クロアの謝罪に応じながら、 書籍を拾おうとするロアを制し、 自分が代わりに書籍を 拾い上げた。 「有り難う」 「あぁ…、元始エノク語の記録書…?」 ロアの感謝に応じつつ 拾った書籍の表紙を見詰め 意外な表題に思わず 書籍に記されているであろう 内容を呟いてしまうクロア。 「少し…知りたい事があって…」 これも違和感の一つだったが 何故か、 自分の記憶と共に視ている 別の記憶の存在を言い出せず 誤魔化してしまうロアの意識。  
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