†始†

33/43

223人が本棚に入れています
本棚に追加
/519ページ
  そして、 「そうか…古い記録から何か思い出せるかも知れないからな」 「ぅん…」 ロアの言葉に 納得してくれるクロア。 周囲の環境を 見詰め直し始めたロアが 感じてしまう最大の違和感は、 「部屋に戻るか?」 「あ…あぁ」 自室に戻る確認の クロアの問い掛けに ロアが頷くと、 そのまま拾った書籍を持ち、 ロアを促し、 一緒に部屋に戻ってくれる クロアの… “恋人の行動” 聖司官の公務の一部を 任され始め、 自分が本当に神殿筆頭、 聖司官であるならば 聖司補佐官のクロアとは、 上官と部下の関係でもあると 自分達の本当の関係の姿を 考え始めているロア。 そうやって恋人同士以外での 関係を意識し始めると、 クロアの自分に対する行動が ただの恋人のモノではなく まるでロアに仕えている 従者の様に思えて仕方なかった。 『クロアは……』 脳裏に過る不確定な答えに キツく右手を握り締め、 指輪の存在を強く意識するロア。 『大丈夫………大…丈夫……』 新たに生まれ掛ける恐れ心に 目を閉じて、 『記憶が戻っても…私達は恋人同士だ…』 泣けるならば 泣いてしまいそうな心の声で、 自分の想いとクロアを 信じようとロアは 自分自身に言い聞かせる。 愛は分からないけれど…、 『本来の関係に戻っても…』 心の奥底から、 『私はクロアの………“婚約者”になる…』 クロアと 愛し合いたいと望むロアの本心。 その誓いを胸に切実な心で ロアは傍らを歩く “恋人”との未来を想った。  
/519ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加