†始†

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  煌々とした室内灯が 灯されたままの明るい室内。 「ハッ……ハッ……ハッ………ハッ………」 ここ最近は 魘される事がなかった 夢の記憶に飛び起き、 荒く短い呼吸を繰り返すロア。 記憶の年代を正確に調べる為に 記録書を読んでいる途中で 眠っていたらしい自分。 じっとりと汗が滲む額に 僅かに張り付く前髪を掻き上げ、 「今の………」 乱れた呼吸を整えながら たった今視た夢の内容と 出来事をロアは考える。 ずっと封印されていた 自分を見付け出してくれて、 意志も心も感情も自我さえも 何もなかった自分に 自己となる全てを与え 世界を与えてくれた兄。 その兄を純真な心で ひたむきに兄、兄弟として慕う 純粋無垢なリデア。 相手も孤独だった弟を 大切に労り、兄として親身に 面倒を看ているだけの、 ただの兄弟だとロアは、 ずっと思っていたけれど…、 「あの……声は………」 まるでリデアの意識を 捕らえ惑わせている様な 相手の声。 甘く…、 心と意識に絡み付く様な 洗脳的な響きのそれ。 [無垢である弟を 意識的に洗脳し束縛する兄。] と云う、歪んだ構図。 歪んだ兄弟関係。 歪んだ兄弟愛。  
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