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前置きも主語も何もない
突然の問い掛け。
だが、
「何がだ?」
ミレアの脚を止めるには
充分な問いに、
「兄上の事です」
セキルは
面に柔らかな微笑を浮かべ
笑っていない眼差しで
ミレアを見詰めたまま、
問い掛けの主体を告げた。
「兄上は成人の儀の直後に“聖主の宿命”が原因で心を壊されました」
セキルが成人してから知った
兄が心を壊し、感情を欠落させ
笑わなくなった原因。
「ですから、記憶を取り戻す為には、もう一度、兄上の心を壊さなくては“聖主の宿命”を思い出し受け入れる事が出来ません」
セキルが
セフィロトの苗木の記憶を使い
敢えてロアの心を壊した理由。
心が昔の状態に戻り、
過去の記憶の恐怖心などから
常に精神が追い詰められている
ロアへ、
いきなり
“聖主の宿命”の記憶を
与えてしまえば、
一気に精神を崩壊させる
危険がある為、
逃れられない原因ではなく
逃れられる原因で、
壊して措かなければ
ならなかったロアの心。
本来はクロアも理解し、
覚悟していた事。
だったが、
全く反応が出来なくなるまで
心を追い詰め
壊す必要はなかった為に、
クロアを激昂させた
嫉妬を伴うセキルの行動。
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