†始†

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  「兄上は本当にただの記憶喪失なのですか?」 まるでロアの記憶喪失を 疑うような確認を セキルは口にする。 セキルは 兄、ロアの記憶喪失の原因が 自分である事は 重々、承知していた。 だからこそ、 兄の心を壊す役目を 進んで負って出た。 今回の事柄の発端が 自分の目的の結果にあると 全ての責任を負う覚悟を 受け入れているセキル。 故に、 そこに付け入っている 何が在るとするならば、 兄と自分の負うべき責任の為に 解明しなくてはならない不審。 「どう見ても、アレは完全に記憶を喪って居る」 セキルの確認に 現状だけで応えるミレア。 「兄上は数年前に…名も無い神族と接触しています」 明白な答えを 明かす気が有るのか無いのか 己の意図を見せないミレアに 告げるセキルの言葉。 “名も無い神族” それは “魔王”を示す暗喩。 事件の起きた当時は まだ成人前であり、 誰もセキルに教えなかったが、 大人しく知らないままで居る セキルではなかった。 「得意は精神接触と意識の共有」 「………………………」 「精神と意識は記憶に関連しますよね?叔父上」 険しい表情で無言となった ミレアに問い掛けの形で セキルは問い詰める。  
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