†終†

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  ――だけども、 「ロア様」 「――ッ!!」 唐突な終わりに 直ぐには現状を受け入れられず、 クロアを愕然と見詰めたまま、 言葉を発する事も 立つ事も出来ないロア。 クロアは そんなロアの側まで近付くと、 「失礼します」 「ッ!!まッ…クロアッ!!待てッ!!」 座ったままであったロアを 抱き上げ、 部屋から連れ出そうとする。 セキルに聖央塔に 連れて行かれた時と同じ状況。 「待てッ!!クロアッ!!…ま…ッ…頼むからッ!!待てッ!!…クロア…ッ」 ただ一つ違うのは、 セキルの時は腕から逃れる為に 降りようとしていたが、 今は逆にクロアの肩に腕を廻し キツく抱き付き、 降りようとはしない事。 もう、戻れないのだと 分かっていても、 「クロ…ア……」 溢れてしまう懇願の呟き。 その瞬間だけ、 本当に微かに強張るクロアの体。 ロアを抱き上げているクロアと クロアの肩に腕を廻し キツく抱き付いているロアでは 互いの表情が見えなかったが…。 『ぁ……』 それだけで 『クロアも………』 ロアは理解してしまった。 理解すると同時に 泣き出したくなる衝動が 込み上げても、泣けないロア。 どれだけロアが頼んでも、 歩みを止める気配のない クロア―恋人―に、 「――ッ…、」 ロアは拒絶の言葉を呑み込み 大人しく抱き付く事しか 出来なかった。  
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