†月恋斯夜†

†終†

「その反乱組織から中央へ、今回の事態を終結させる為の要求が来た」

重く場に染み入る声で、

反乱組織から要求が来た事を

前置きとして改めて告げる聖主。

「要求は“次期聖主の資格を持つ者と学殿院内に捕らえられている者達全員の交換”」

「ッ!!」

聖主は何一つ、

動揺の見えない口調と態度で

要求の内容を暗唱している様に

クロアに伝えた。

学殿院内に、

捕らえられている者達全員と、

次期聖主の資格を持つ者の交換。

ロアが神殿に聖司官として

完全に復帰できない状況での

神殿管理施設を狙った犯行から

ロアが狙われている可能性は、

考えいたクロア。

レティスも対策本部で

事件や反乱組織の詳細を

聞いている過程で考えた

最悪な可能性。

しかし、

まさか、ここまであからさまに

次期聖主を狙って来るとは

考えられなかった。

一体、どうするつもりなのか。

誰も何も言葉を口に出せない

深刻な沈黙の満ちる場。

この様な事態の場合は、

安易に要求を聞き入れず、

捕らえられている者達の救出を

優先して考え、交渉を持ち出し

対処する時間を作り、

事態を鎮圧させるのが

正しい方法だったが、

初めから、

次期聖主を公言して狙った

犯行なだけに、

通例通りの対応が

迂闊に出来なかった。