†終†

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  ――それでも、 時々、どうしても 生きる事に 耐えられなくなる時があった。 その度に繰り返される 自傷行為。 全ては、生きる為に、 擬似的な死を迎える行為。 その過程で、 自分が何も感じなくなった事に 気が付いた。 痛みも怖さも苦しみも…、 何一つ、感じない自分。 どれだけ、 繰り返し続けたのか…。 いつしか、 生きる為の自傷行為は 心を壊し感情を消す作業に 変わっていた。 とても、 正気では生きられなかったから 生きる事への妨げとなる 心を壊し、感情を消す事にした。 ――――― ―『いい加減にしろ』― 何度も繰り返す作業に 怒りを含む父の声。 その薄暗い部屋の寝台で 両手を枷に拘束され 横たわる自分に向けられる言葉。 ―『でしたら、治療なさらなければ良い。違いますか?父上』― 左側しかない視界で 父である聖主を見上げ、 事実だけを告げる。 ―『たとえ、それで死んだとしても、自分自身の責任でしょう?』― いつの頃からか、 生きたいのか、死にたいのか 分からなくなっていた。 けれど、 その状態こそが 自分の求めた姿だった。 生きてるけれど死んでる自分。 その、 “死ねない死を望む” 生きてはいない生き方こそ 自分の生きる血道だった。  
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