†終†

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  クロアはそんなロアを 平静の表情で側近としての 目的を果たす為に 抱き上げていたが、 『クロ…ア……』 フィリルにも聴こえてしまった ロアの掠れた声が上がった時、 悲痛な眼差しと耐え忍ぶ表情を 浮かべたクロアとロア。 あの場で何も出来ずに、 二人の成り行きを 見守るしかなかった フィリルだけが視ていた 二人の終わりを覚悟した表情。 互いの立場に縛られない ただの恋人同士の終わり。 それを、 どこか遣り切れない思いで 見送ったフィリル。 二人が向かった最奥の部屋に 一体、何があるのか、 フィリルは知らなかったが、 暫くの間、 部屋の外でロアとクロアが 出てくるのを待っていた フィリルの前に、 部屋の中からクロアを従え ロアが顕れた時、 そこに居たのは、 フィリルを無関心に一瞥し 「着いて来い」 たった一言。 淡々とした口調で命じ、 返事も確認せず、 フィリルの前を通り過ぎるロア。 2ヶ月前には、 ―『フィリル、おはよう』― 無垢であどけない笑顔を浮かべ、 くるくると表情が変わっていた ロアの姿は微塵の欠片もなく、 何事にも無表情で無関心な 冷淡な主の姿だった。  
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