†終†

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  ロアの掌にも 簡単には納まってしまう その小瓶の中身は、 「神水…」 セキルに手渡された 小瓶を見詰め、 ロアは中身の正体を呟く。 神水とは 神気の少ない場では 長時間、保てない、 一部の神族の体を 少しでも長く保たせる為に、 一時的に足りない神気を補う 唯一の物。 第2階層では 長くても最大6時間しか 留まれないロア。 万が一の為に 身を保たせる唯一の術として 聖域を出る前に クロアに渡しているそれを、 別に用意し 持って来ていたセキル。 「事前に飲んでおくだけでも、体の負担は随分、違います」 僅かだが瘴気の満ちる場。 第2階層でのロアの事を 気遣うセキルの言葉。 「すまない」 ロアもセキルの気遣いを 素直に受け取り、 セキルから渡された 神水を飲む事にする。 「飲ませて差し上げましょうか?」 小瓶の口に唇を当てる寸前、 ロアに掛かるセキルの戯言。 「あいにく、そう云った事はクロアの役目だ」 微かな冷笑を浮かべ 素っ気ない程に淡々と クロアを引き合いに出し、 応えるロアの返し。 そして、 セキルの反応を気にする事なく ロアは神水を一気に飲み干すと 「助かった」 空になった小瓶をセキルに返す。  
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